リーマンショックから未だに不況が続いているアパレル業界。その惨状を撮ったテレビ番組を見て、大きなショックを受けました。9月13日放送のNHKクローズアップ現代+「新品の服を焼却!売れ残り14億点の舞台裏」です。
アパレルショップやメーカーの在庫を引き取って処分している大阪の業者には、店頭に一度も並ばなかったスーツが持ち込まれ、値段交渉が行われています。
メーカーが希望する1着当たりの引き取り額は、定価の約1割で1,500円。これを業者は1,430円に値切って交渉が成立し、メーカーは600万円の赤字で手を打ちました。
引き取られた服たちはタグを切り取られ、どこのブランドか分からないようにして、安売り店へ渡されます。
最もショックだったのは、引き取り業者の手にも渡らなかった新品の服たちがどこへ行くかです。なんと都内にある産業廃棄物処理施設に運ばれて、メーカー立ち合いのもと、焼却処分にされるんです。
持ち込まれる量は年間20トン、1社当たり10トントラック数台分。クレーンで吊り上げられているのが全て新品の服だと思うと、ギョッとしますね。
焼却処分にメーカーが立ち会う理由は、自分たちの目で最期を看取りたいから。
服の企画から販売までには半年から1年もかかっているのに、それを無かったことにしてしまうのは、ブランド価値を下げないためだとか。大事な商品がどこか他に流れて行かないよう、最後まで見届けるんだそうです。
もっと驚いたのは、イギリスの有名ブランド「バーバリー」が、売れ残り42億円を焼却処分すると発表したことです。「捨てるぐらいなら貧しい人たちに寄付しろ」と批判が殺到して、バーバリーは焼却処分の撤回をWEBサイトに掲示したそうですが、いったいどこに持っていくのやら。
下の画像みたいにパリコレモデルがランウェイを着て歩いたコートが、ひょっとしてホームレスが身体を温めるコートになるのかどうか、世界中が注目しています。
そもそもこんな事態に陥ったのは、下のグラフを見て分かるように、リーマンショックがあった1990年代以降から、売り手と買い手の需給バランスが開き過ぎてしまったせい。余剰在庫が14億点もあるのに、アパレル業界がかつてのバブル期を忘れられずにいるからだと指摘されています。
私もバブル期には銀座や青山の高級ブランドショップで、1着が10万円を超えるブラウスを平気で買っていましたが、今は見向きもしなくなりました。普段着の服、流行を追う服は、高いものは買わずにファストファションで充分だと思ってしまうからです。
ちなみにファストファッションブランドは商品を店頭に出している期間が長いので、大量の売れ残りを防げるのだとか。高級ブランドと真逆なのが意外でした。
実際に昨日の外出もこのスタイル。人気画家の個展とレセプションパーティーがあったのですが、メイドインチャイナのタイドバイ(Taidbuy)で購入した2,192円の綿麻ワンピースを着ていきました。
お金持ちそうな方々から「綺麗な色ですね。どこでお求めになったのですか?」と聞かれ、堂々と「ネットショップで2,000円でした」と答えたところ、皆さん絶句しておられました。
ちなみに履いているブーツもプチプラで、去年の秋に購入したピエロ(Pierrot)の「サイドカット バイカラーデザインブーツ」3,980円です。
素材が柔らかくて本革そっくり。かかとがクロコになっているのがおしゃれだし、引っ掛けても革が剥がれないスタッグドヒールです。
人気の定番商品なのでしょう、今年もPierrotの公式サイトに載っています。長い付き合いだったブルーノ・マリがなぜか足に合わなくなって、去年の冬はこればかり履いていました。
靴は歩きやすいのがいちばん、服も気軽に着られるのがいちばん。ブランド名をわざわざ口して偉ぶっていた昔の自分を思い出すたび、穴に入りたい気分です。