とっても素敵なのに、身に着けることのないアクセサリーがあります。時どき箱から出して眺めては、遠くなった思い出を心から取り出すための宝石です。
これはダイヤとエメラルドのピアス。ずいぶん昔に、出張でニューヨークに行っていた恋人から貰いました。「日本人の男が一人でティファニーに入るのって、なんだか照れくさいもんだよ」と言っていましたが、急いで買った割りには奮発した値段なのは想像がつきます。
そそっかしい私は落としてしまうのが心配なのと、ゴールドの土台が苦手なせいで、結局は貰ったときしか着けることはありませんでした。でも眺めているだけで幸せ。ティファニーのショーウインドウの前で朝食のクロワッサンを食べるホリーみたいな気持ちになるのです。
そしてもう一つ、これはムーンストーンのペンダント・トップ。小学校3年のときに、溜めたお小遣いで買いました。
祖母に連れられて初めて入った横浜元町の宝石店で、色とりどりのジュエリーたちを前にして1時間は悩んだでしょうか。選んだ基準は換金価値が高そうなもの。実はその数日前に、テレビで「インフレが来たらお金はただの紙切れになる」という話を耳にして、貯金は解約して宝石にしておこうと決めたからでした(笑)
今になってみれば、売っても1万円しないでしょうけれど、たとえ缶バッジであろうと子どもの頃の宝物は格別なのです。小さな掌で何度も撫でまわされて、とろんとしたミルキーなムーンストーンは、世界に一つの愛しい宝物になりました。もはやアクセサリーではなくてお守りだなと思っています。