自分の身体を採寸して作ってくれるオーダーメイドの服は、平成以降はおそらく需要が激減していると思います。代わって対等したのが「既製服」。昭和には安さの代表であった既製服は一般的となり、今では高級ブランドのオートクチュールぐらいでしか扱っていません。
身体に服を合わせる時代から、服に身体を合わせる時代へ。既製服は技術の進化とともに安く手に入るようになり、しかもサイズ展開はXXSからXXLまでバリエーションが豊かになりました。
もしサイズが小さくて着られなかったとしても、月1万円の会費を払ってフィットネスクラブでトレーニングに励めば、LからMへサイズダウンできちゃう。オートクチュールより遥かに安上がりですね。
ところがそんな努力の問題に反し、体形に合わせた服を買わせようとする雑誌の試みもあります。下の画像は『低身長でもスタイルよく見える!「ユニクロ」のハイウエストワイドパンツが人気沸騰中! 』というCamCamの記事からお借りしたもの。身長153cmのスタッフが、ずっと憧れていたワイドパンツを履いてもバッチリ決まるというお手本コーデです。
ベルトを含めて配色はステキ。ワイドパンツにはタイトなトップスというセオリーもバッチリ。足が長く見える工夫として、かかとより丈を長くしたパンツにハイヒールを履いているのも理解できます。モデルさんの頭を隠した状況はオッケー。スタイルが良くて格好いい!
ところが頭まで全表示すると、彼女の身長は4~5等身となり、ワイドパンツが悪目立ちするアイテムになります。(出典:CanCamm2018年1月7日)。
ネットで「背が低い」&「ワイドパンツ」をZOZOのWEARで検索すると、低身長でも決まるワイドパンツコーデの画像がいっぱい出てきます。サイズ感を払拭するコーデを頑張っているのが見て取れますが、うまくいったねと思えるのは、身長の高低なんて関係ない異次元なコーデだけです。
一般の世界では、努力しているのが痛々しいほどに、なぜわざわざ低身長の方がワイドパンツを着る努力をするのかが分かりません。むしろ低身長を可愛いメリットと捉えれば、高身長の人には羨ましいアイテムを優先してセレクトできるのにと思うのです。
私が担当スタイリストなら「ワイドパンツは着なければいいでしょ」と言っちゃうかも・・・。背を高く見せるために、ハイウエスト?ハイヒール?って、バレバレですよね。上のモデルさんはオーソドックスな形と丈のスタンダードなパンツを履けば、もっと背が高く見えて上品な雰囲気を醸し出すでしょう。
こんなことを言う私は、身162cmの普通体形です。なんとかパンツの裾丈は直さずに済むのでバランスはキープできて、今どきファッションにもこの歳でチャレンジしています。でも失敗だったと思う服は多々あるのです。
下の画像で履いてるのは、去年の秋に買ったピエロ(Pierrot )の「ベルト付き ハイウエストパンツ」。形は可愛いのですが、足を長く見せようとするデザインの「あざとさ」が見えすぎちゃって、1回しか履きませんでした。
ヒラヒラの付いたハイウエストじゃなく、もう少し生地の質がよければ、これ以降の記事にいっぱい登場したことでしょう。サイズさえ合っていれば登場の機会は幾らでもあるのです。
狙っている服が、1万円札を何枚も叩くお買いものだとすれば、身体に合わない流行には目をつぶることをおすすめします。あっという間に通り過ぎてしまう流行の服を買うより、変わることのない身長にマッチしたスタンダートアイテムを買ったほうがずっとおしゃれに見えるはずです。
だからこそ奇をてらわないデザインを貫くエルメスが、普遍的ブランドの最高峰にあるのではないでしょうか。